
「値上げ」や「値下げ」でどれくらい利益が変わる? 最近話題の価格弾力性とは何か?
経営で役立つアイデアビジョナリー編集部 2024/09/03
価格弾力性とは、商品の価格が変動した際に需要や供給がどの程度変化するかを示す指標です。具体的には、価格が変動したときに需要(または供給)がどのくらいの割合で増減するかを数値化したものです。例えば、価格が10%上昇したときに需要が20%減少する場合、需要の価格弾力性は「2」となります。この指標は、価格設定やマーケティング戦略を立てる際に非常に重要な役割を果たします。
目次
・価格弾力性の見方
・価格弾力性が高い場合
・需要の価格弾力性が低い場合
・価格弾力性の要因
・価格弾力性の計算方法
・価格弾力性計算の具体例
・価格弾力性の計算で注意すべきポイント
・価格弾力性を計算するタイミング
・価格弾力性を経営に活かす方法
・供給の価格弾力性とは?
・その他の弾力性
価格弾力性の見方
価格弾力性の基準値は「1」です。以下のように解釈されます。
価格弾力性が1を上回る場合=価格弾力性が大きい(需要が価格に対して敏感)
価格弾力性が1を下回る場合=価格弾力性が小さい(需要が価格に対して鈍感)
冒頭の「価格が10%上昇したときに需要が20%減少する」商品の場合は、価格弾力性は「2」ですので、価格弾力性が高い商品ということになります。価格弾力性が高いとうことは、値上げによって売り上げが下がるということを意味します。一方で、価格弾力性が高い商品は、値下げをした場合に需要が伸びやすいともいえます。
価格弾力性が高い場合
価格弾力性が高い商品は、価格の変動に対して需要が大きく変化します。例えば、贅沢品や嗜好品などが該当します。これらの商品は価格が上がると需要が急激に減少し、逆に価格が下がると需要が急増します。したがって、価格設定には慎重さが求められます。
(具体例)
ブランド品:高価なバッグやジュエリーなど 嗜好品:高級ワインやシガーなど 代替可能品:一般的な文房具や日用品など
これらの商品は価格が変動すると需要も大きく変動します。
需要の価格弾力性が低い場合
需要の価格弾力性が低い商品は、価格の変動に対して需要があまり変化しません。例えば、生活必需品や医療品などが該当します。これらの商品は価格が上がっても需要が大きく減少せず、価格が下がっても需要が大きく増加しません。したがって、価格設定においては比較的自由度が高いと言えます。
(具体例) 生活必需品:米や野菜、トイレットペーパーなど 医療品:処方薬や医療機器など 特定の業種のみが使う機械:特殊な産業機械など
これらの商品は価格が変動しても需要はあまり変動しません。
価格弾力性の要因
価格弾力性を決定する要因には以下のようなものがあります。
-
必需性
生活に必要不可欠な商品は価格弾力性が低い傾向があります。
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代替可能性
代替品が多い商品は価格弾力性が高い傾向があります。
-
心理的影響
価格設定の方法(端数価格など)によっても価格弾力性は変わります。
価格弾力性の計算方法
価格弾力性は以下の計算式で求められます。
価格弾力性 = 需要の変化率(%)÷価格の変化率(%)
ここで「需要の変化率」は、価格変更後の売上数と価格変更前の売上数の差を価格変更前の売上数で割ったものです。同様に「価格の変化率」は、価格変更後の価格と価格変更前の価格の差を価格変更前の価格で割ったものです。
価格弾力性計算の具体例
以下に具体的な計算例を示します。
例1:ドリンクの価格を20%値上げした場合 価格変更前の売上数:1000個 価格変更後の売上数:800個 →需要の変化率(800-1000)÷1000=-0.2(-20%)
価格変更前の価格:500円 価格変更後の価格:600円 →価格の変化率(600-500)÷500=0.2(20%)
価格弾力性|-0.2|÷|0.2|=1
この場合、価格弾力性は「1」となります。
価格弾力性の計算で注意すべきポイント
価格弾力性を計算する際には、以下の点に注意が必要です。
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絶対値を使用する
需要の変化率と価格の変化率は絶対値を使用します。マイナスの値が出た場合でも、絶対値に変換して計算を行います。
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データの正確性
価格変更前後の売上数や価格のデータが正確であることが重要です。
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期間の設定
価格変更前後のデータを収集する期間を適切に設定することが必要です。
価格弾力性を計算するタイミング
価格弾力性を計算するタイミングとしては、以下のような場合が考えられます。
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新商品の価格設定時
新商品を市場に投入する際に適切な価格を設定するために計算します。
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既存商品の価格再設定時
既存商品の売上が伸び悩んでいる場合に価格を見直すために計算します。
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キャンペーン実施時
セールやキャンペーンを実施する際に価格設定を見直すために計算します。
価格弾力性を経営に活かす方法
価格弾力性を経営に活かす方法としては、以下のようなものがあります。
価格設定の判断材料
需要の価格弾力性を基に適切な価格を設定します。
商品分析
商品の現状を分析し、今後の方向性を考えます。
セールやキャンペーンの対象商品選定
価格弾力性が高い商品をセールやキャンペーンの対象にします。
小売やメーカーとの協議
価格弾力性を基に小売やメーカーと協議し、適正価格を設定します。
供給の価格弾力性とは?
上記で見てきたものは「需要の価格弾力性」です。一方の供給の価格弾力性とは、商品の価格が変動した際に供給量がどの程度変化するかを示す指標です。以下の計算式で求められます。
供給の価格弾力性=供給量の変化率÷価格の変化率
供給の価格弾力性が高い商品は、価格が上がると供給量も大きく増加します。逆に、供給の価格弾力性が低い商品は、価格が上がっても供給量はあまり変化しません。
その他の弾力性
価格弾力性と供給の弾力性以外にも以下のような弾力性があります。
労働の賃金弾力性
賃金の変化によって労働時間がどの程度変化するかを示す指標です。
投資の利子弾力性
利子が変化した際に投資がどの程度変化するかを示す指標です。
価格の交差弾力性
ある財の価格が変動した際に別の財の需要がどの程度変化するかを示す指標です。
これらの弾力性を理解し、経営に活かすことで、より質の高い経営計画を立てることが可能になります。 以上が価格弾力性についての詳細な解説です。価格弾力性を理解し、適切に活用することで、企業の成長や安定を図ることができます。