
テスラ株の暴落を予測した投資家が、2025年にテスラの株価が回復することはないと考える理由
吉田和行 2025/03/19
急成長する前のテスラ株を大量に購入し、長年にわたって投資してきたロス・ガーバー(Ross Gerber)氏は、2月末のBusiness Insiderの取材に対し、2025年中にテスラ株が最大50%下落すると予測していると語った。その理由として、イーロン・マスク(Elon Musk)CEOが政府効率化省(DOGE)やスペースX(SpaceX)、xAI、Xといった他のプロジェクトに注力している点を挙げた。
取材前からテスラ株は下落していたが、その後もさらに下落し、3月12日の取引終了時点で、2月末から18%下落した。このことからガーバー氏は自身の予測に対する確信を強め、やはり、今年中に株価が回復する道筋が見えないと、Business Insiderの新たなインタビューで語った。
テスラ株のチャート。 テスラ株のチャート。 Matt Fox/BI ガーバー氏は、資産運用会社ガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメント(Gerber Kawasaki Wealth & Investment Management)のCEOであり、約30億ドル(約4460億円)の資産を管理している。アメリカ証券取引委員会(SEC)の開示書類によると、同社は2024年にテスラ株を31%売却し、保有数は26万2000株となった。その価値は同年末時点で1億600万ドル(約158億円)となっている。
テスラに対して強気から弱気に転じたガーバー氏は、最近のインタビューで、株価が急落した後でもテスラ株が依然として過大評価されていると強調した。
テスラ株が回復するには 株価を回復させるために、テスラは何をすればいいのだろうか。その答えは簡単だが、捉えどころがないとガーバー氏は考えている。すなわち「利益の増加」だ。
1株当たり利益(EPS)が5ドルならば、株価収益率(PER)が50倍だとすれば株価は250ドルになる。だが、テスラにはそこに至る道筋が見えていない。
テスラの1株当り利益は2024年に52%減少し、2.04ドルになった。アナリストの予測では、2025年に2.75ドル、2026年には3.65ドルに回復するとされているが、経済の不確実性や世界でのテスラ販売数の減少により、この予測には疑問が呈されている。
ガーバー氏は、イーロン・マスク氏の挑発的な政治的行動が、長期的にはブランドとしてのテスラにとって逆風になると考えている。彼は、大統領就任式でマスク氏がナチスを想起させる敬礼をしたことを批判し、マスク氏の政治的な発言や立場が顧客を遠ざけていると指摘した。また、トランプ大統領がテスラを購入すると発言したことについても否定的な見解を示した。
その観点から、150倍の株価収益率で取引されていた株が下落し続けても、「私にとってまったく驚くことではない」とガーバー氏は述べている。
テスラ株は高過ぎる テスラ株の評価は最近急激に落ち込んだが、それでも依然として正当化できる水準ではないとガーバー氏は述べている。
テスラ株は3月12日に予想株価収益率65倍で取引された。これはS&P 500の平均株価収益率の3倍以上だ。この価格ではとても割安とは言えないとガーバー氏は言う。しかもアナリストはテスラの2025年の車両販売予測を2年連続で下方修正している。
「投資家としての経験から見ても、テスラ株は他の株とは違って、どんな評価方法でもまともな評価をすることができない。エヌビディア(Nvidia)が株価収益率20倍で取引され、75%の利益増を見込み、自社株買いも行っている現在のような調整局面ではなおさらだ」
広範な市場動向が、テスラの株価収益率に圧力をかけている。ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の関税政策による経済的不確実性が続く限り、投資家はテスラを低く評価するだろうとガーバー氏は述べている。
今後5年間は、テスラの成長見通しがどう変化していくのかが焦点となる。